熱き技の応酬、見開き相撲マンガ「火ノ丸相撲」です。
やばい、このままだと初日から遅刻する。
新学期早々に遅刻となれば、説教は避けられない。
必死の思いで、通い慣れた通学路を疾走する。
走りながら、ふと考える。
次の角を曲がれば、近道になるかもしれない。
一か八か、いつもなら通らない角を曲がる。
ドン。
一瞬視界が暗くなる。
おれは何かにぶつかってしまったようだ。
ふと見ると、そこには、一人の少女がふらつきながらも立っていた。
制服を着ているところを見ると、同じ高校生だろう。
向こうも急いでいたらしく、その口には、トーストをくわえていた。
・・・・・・・・このあと、教室で転校生である少女と再会する予定ですが、
こんなシチュエーションは現実には存在しません。
どうも、ハレノヒです。
妄想につきあっていただき、ありがとうございます。
前回「週刊少年ジャンプ」について、語らせていただきました。
にもかかわらず、このブログでは、いまだジャンプ作品を取りあげていません。
というわけで、今回は、第一部学生相撲編が無事完結した
「火ノ丸相撲」 川田
に、がっぷりよつしたいと思います。(若干ネタばれあり)
主人公、潮火ノ丸は体格に恵まれず、相撲の神様に見捨てられていた。しかし、火ノ丸の相撲にかける熱意は強く、横綱になる夢をあきらめてはいなかった。
入学した大太刀高校で、小関部長と出会い、仲間とともに全国制覇と、その先にある角界入りを目指すという熱い相撲マンガ、それが「火ノ丸相撲」である。
このマンガが川田先生の初連載作品であると聞き、正直驚きました。
画力が高く、見開きを使った相撲の見せ方が本当にうまい。
少年誌としては、なかなかに不向きであろう相撲を題材に、よくぞここまでと描いてくれたなという気持ちです。
なかでも、一番感心したのは舞台設定。
大相撲ではなく、学生相撲から始めたこと。
大相撲になってしまうと、登場人物が、あんこ型、そっぷ型の大銀杏だらけになってしまい、キャラの見た目を描き分けるのに一苦労です。
その点、学生相撲であれば、ある程度いろいろなキャラを作ることが可能であり、読者は、読みやすくなります。
キャラの描き分けは、マンガにとって、とても重要。
大太刀高校をとってみても、
最強小兵、潮火ノ丸。
オーソドックスなあんこ型、小関信也。
元不良銀髪、五條佑真。
レスリング国体優勝のゴリマッチョ、國崎千比路。
貧弱小柄フルート、三ツ橋蛍。
中肉中背眼鏡、辻桐仁。
というように、見た目がバラエティ豊かに、描き分けられています。
これって、わかりやすいですよね。
ちなみに、大相撲編から始まっていたらこんな感じ。
そっぷ型大銀杏、火ノ丸。
あんこ型大銀杏、小関。
そっぷ型大銀杏、五條。
そっぷ型大銀杏、國崎。
ほそっぷ型大銀杏、三ツ橋。
そっぷ型大銀杏、辻。
ね、わけわかんないでしょ。
始めに高校を舞台としたことが、このマンガの勝因の一つだと思います。
そして、この六者六様の相撲部員の試合や稽古が、とにかく熱く、泥臭い。
礼奈さんや堀ちゃんといったマネージャーも出てきますが、萌え要素は少なめ。
けど、そこがまたいい。
若いころならともかく、中年には萌え要素は不要。
求めるのは、王道の少年マンガです。
念のため、川田先生の描く礼奈さんと堀ちゃんは可愛いことを申し添えます。
そして、王道の少年マンガとして、
中年の厨二心(そろそろ捨てなきゃね)をくすぐるのが技の数々。
鬼車。
百鬼薙ぎ。
百千夜叉堕。
大蛇断。
六ツ胴斬。
などなど。いったいどこのKOFだよって感じに、中年の心を鷲掴み。
本来の決まり手だけだと、少年誌には向かないと思いますが、これらの技があることでファンタジー要素が生まれ、見事に少年誌向きになっています。
第一部が無事完結しましたが、高校編を変に延ばさず、角界入りさせたのも英断だったと思います。高校時代とは違う立ち位置になった登場人物たちが、どれだけ熱い闘いをみせてくれるかと思うと、今から大相撲編が楽しみです。
それでは、中年になり、そっぷ型からあんこ型に成長を遂げたハレノヒでした。
ごっつぁんです。